低侵襲心臓手術(MICS)
  • 心臓手術は通常、喉元からみぞおちに至るまで20~25㎝程度切開を要する胸骨正中切開法を用いて行います。この方法では胸骨の骨癒合が得られるまで一部日常生活に制限が生じたりしますが、近年では胸骨をまったく切らずに、小さな皮膚切開で行う低侵襲心臓手術(MICS:Minimally Invasive Cardiac Surgery)が脚光を浴びるようになりました。
    当科でも2020年12月から右小開胸によるMICSを開始しました。
    当院のMICSでは肋骨と肋骨の間(肋間)を6~10㎝程度切開し、内視鏡(胸腔鏡)を用いて手術を行います。 ※図1)MICS術の写真 ※図2-1)MICSカメラ映像【手術前】 ※図2-2)MICSカメラ映像【手術後】

    通常の心臓手術と同様に人工心肺装置を用いて行いますが、大腿の付け根(鼠径部)を小切開し動脈静脈に管を挿入します。切開は皮膚のしわの方向に合わせて行うため、傷跡は目立ちにくくなります。また肋骨を切らずに心臓へ到達するため、縦隔炎といった重症感染症のリスクも非常に低く、術後の運動制限もほとんどありません。そのため、早期リハビリが可能となり、早期退院のみならず早期社会復帰が可能となります。
    また、女性では創部が乳房に隠れるため、美容的にも満足度が高い手術と言えます。
    なるべく創部を目立たなくしたい患者様や、スポーツや肉体労働に従事されている患者様、早期に職場へ復帰したい患者様に適した手術と言えます。 ※図3)MICS外来写真

    ただし、通常の手術と同様に人工心肺装置を利用しますし、利点ばかりではなく欠点もありますのですべての患者様に適しているわけではありません。患者様の全身状態を十分に考慮し、安全に心臓手術が行えるように取り組んでいます。
    (文責:医局長 高木)

  • 図1)MICS術の写真
    図2-1)MICSカメラ映像【手術前】
    図2-2)MICSカメラ映像【手術後】
    図3)MICS外来写真

心臓手術は通常、喉元からみぞおちに至るまで20~25㎝程度切開を要する胸骨正中切開法を用いて行います。この方法では胸骨の骨癒合が得られるまで一部日常生活に制限が生じたりしますが、近年では胸骨をまったく切らずに、小さな皮膚切開で行う低侵襲心臓手術(MICS:Minimally Invasive Cardiac Surgery)が脚光を浴びるようになりました。
当科でも2020年12月から右小開胸によるMICSを開始しました。
当院のMICSでは肋骨と肋骨の間(肋間)を6~10㎝程度切開し、内視鏡(胸腔鏡)を用いて手術を行います。 ※図1)MICS術の写真 ※図2-1)MICSカメラ映像【手術前】 ※図2-2)MICSカメラ映像【手術後】

図1)MICS術の写真
図2-1)MICSカメラ映像【手術前】
図2-2)MICSカメラ映像【手術後】

通常の心臓手術と同様に人工心肺装置を用いて行いますが、大腿の付け根(鼠径部)を小切開し動脈静脈に管を挿入します。切開は皮膚のしわの方向に合わせて行うため、傷跡は目立ちにくくなります。また肋骨を切らずに心臓へ到達するため、縦隔炎といった重症感染症のリスクも非常に低く、術後の運動制限もほとんどありません。そのため、早期リハビリが可能となり、早期退院のみならず早期社会復帰が可能となります。
また、女性では創部が乳房に隠れるため、美容的にも満足度が高い手術と言えます。
なるべく創部を目立たなくしたい患者様や、スポーツや肉体労働に従事されている患者様、早期に職場へ復帰したい患者様に適した手術と言えます。

図3)MICS外来写真

ただし、通常の手術と同様に人工心肺装置を利用しますし、利点ばかりではなく欠点もありますのですべての患者様に適しているわけではありません。患者様の全身状態を十分に考慮し、安全に心臓手術が行えるように取り組んでいます。
(文責:医局長 高木)

虚血性心疾患
心筋の虚血(血流の不足)が原因となる疾患の総称で、狭心症、心筋梗塞、無症候性心筋虚血、心室瘤などがこれにあたります。前胸部の激しい痛み、違和感、息苦しさ、動悸など程度によって症状はさまざまです。薬物治療からカテーテル治療、手術と患者さんの状態に応じて適した治療もさまざまです。

虚血性心疾患の手術
冠動脈バイパス手術
狭心症や心筋梗塞の患者さんに、動脈硬化で細くなった冠状動脈に血管をつなぎ、血流を増やして胸の痛みを治し、心臓の働きを良くする手術です。当科ではほとんどの患者さんに対し、心臓が動いた状態で手術を行う心拍動下冠動脈バイパス手術(OPCAB)を行っています。
弁膜症
心臓の中で血液の逆流を防いでいる弁に起こる疾患の総称です。大動脈弁狭窄症・閉鎖不全症、僧帽弁狭窄症・閉鎖不全症、僧帽弁逸脱症などがあります。古くはリウマチ熱に伴う弁膜症が主でしたが、最近は加齢や動脈硬化などに伴う弁膜症が増加傾向にあります。また、感染性心内膜炎に伴うものが増えています。症状は病気に犯された弁と狭窄か逆流かによってさまざまですが、多くは初期には無症状で、進行とともに心不全の症状(息切れ、むくみなど)が出てきます。重症例に対しては手術がもっとも確実な根治的治療であり、時期を逃がさずに手術をすることが重要です。

弁膜症の手術
心臓弁膜症手術
大動脈弁置換術、僧帽弁置換術や形成術、三尖弁形成術、連合弁膜症手術を行い、重症例でも良好な成績を挙げています。
大動脈疾患
大動脈瘤、大動脈解離が代表的です。部位別に胸部大動脈瘤、胸腹部大動脈瘤、腹部大動脈瘤などに分類され、手術適応が異なります。動脈瘤は多くは無症状で、健診などで異常を指摘されるケースが多いことが特徴です。大動脈解離は激しい痛みを伴い、意識を失ったり、ショック死したりすることがあります。動脈瘤の破裂も同様の症状が見られます。治療法ではステントグラフトを用いた、血管内治療が注目されています。

大動脈疾患の手術
動脈瘤手術
胸部大動脈瘤、胸腹部大動脈瘤、腹部大動脈瘤に対する人工血管置換術を行っています。また、細い管(カテーテル)を用いて血管内に人工血管(ステントグラフト)を入れ、動脈瘤を内側から直す治療を行っています。胸部や腹部を切開しないため、痛みが少なく手術後の回復が早いのが特徴です。
末梢血管疾患
急性動脈閉塞、閉塞性動脈硬化症、下肢静脈瘤などが対象となります。エコノミークラス症候群で知られる深部静脈血栓症は、現在では外科的な治療が行われることは少なくなりました。

末梢血管疾患に対する手術
末梢血管疾患に対する手術
動脈閉塞症に対するバイパス手術、静脈疾患に対する治療を行っています。
ステントグラフト内挿術
ステントグラフトは、人工血管にステントといわれるバネ状の金属を取り付けたもので、これを圧縮して細いカテーテルの中に収納して使用します。ステントグラフトによる治療では手術による切開部を小さくすることができ、患者さんの身体にかかる負担は極めて少なくなります。
TAVI
経カテーテル的大動脈弁留置術のことで、重症の大動脈弁狭窄症に対する新しい治療法です。従来の手術とは異なり、開胸することなく、また心臓を止めることもなく、カテーテルを使って人工弁を患者さんの心臓に留置します。
その他
成人先天性心疾患、心臓腫瘍などのほか、不整脈、心不全なども手術の対象となります。